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長い文など

【東武バス】2002年頃の沼南営業所の時刻表を再現してみた

 

Wayback Machine*1東武バス関連のサイトを漁っていると、2002年~05年ごろまでのほぼ全てのバス停の発車時刻表が閲覧可能な状態でアーカイブされていることに気が付きました。

 

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これはすごい。これだけのデータが残っていれば、当時のダイヤを時刻表のフォーマットにアウトプットできる……!

 

というわけで、実際に2002年頃の沼南営業所の時刻表を作ってみました。

 

ついでに、アーカイブサイトで調べたことや過去の記憶に基づいて

  1. 2002年時点での当該系統の運行状況
  2. 2002年から2020年の間の運行状況の変遷

 についても系統別にまとめました。

 

 

0.2002年当時の路線網について

まずは、沼南営業所とその2002年当時の路線網全体について、現在と比較しつつ概説します。

沼南営業所は、主に柏市南部(旧沼南町の町域を含む)を事業エリアとする東武バスイースト(2002年の分社化前は東武鉄道バス事業本部)の営業所です。

管轄路線は柏駅東口発着系統と南柏駅東口発着系統に大別され、柏駅からは市中部の名戸ヶ谷・新柏、旧沼南町の大津ヶ丘・片山・手賀・布瀬方面等に向かう路線が展開されています。

南柏駅からは光ヶ丘・増尾・中原・酒井根等の住宅街に向かう路線が展開されています。

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沼南営業所路線図 ←2002年/2020年→

上図は2002年と2020年の沼南営業所管轄路線を比較したものです。

一見してすぐに分かるのが、図中では右下付近にあたる沼南町方面の路線の衰退です。2002年の路線図では高柳駅や岩井を通る路線が確認できますが、これらの路線は統廃合され2020年では存在しません。

柏市エリアにも、千代田町増尾駅付近に現存しない路線が見られます。いずれの路線も需要減などの理由により廃止されています。

一方、新柏駅を発着する路線、工業団地中央を経由する路線、南部クリーンセンターを発着する路線等は、当時まだ開業していませんでした。2002年以降、廃止された路線長には遠く及ばないものの、まちづくりや公共・商業施設の進出に合わせる形で、需要が見込めるところには新規路線が開設されたようです。

これらの変遷を踏まえたうえで、柏駅発着系統の2002年当時の時刻表を系統別に見ていきます。

 

※なお、本時刻表は各停留所の発車時刻表からデータを収集して作成している関係上、終着停留所の到着時刻が不明なため、これについては残念ながら記載しておりません。もしご存知の方がいらっしゃれば是非ご教示願いたいです。

 

1.自衛隊循環・高柳駅発着系統([柏22][高柳01])

1-1.2002年時点での運行状況

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2002年以降に廃止された系統の中で最も路線長が長いのがこれらの系統です。

[柏22]自衛隊循環は、柏駅東口から[柏31]と同じルートを工業団地まで辿った後、R16をそのまま南下し、系統名にもなっている海上自衛隊下総航空基地の北側をぐるっと周り、高柳駅に立ち寄った後再び榎木戸から[柏31]のルートに合流して柏駅まで向かうという、長大循環系統でした。

循環系統ゆえに周回方向が異なる2通りの便が運行されており、先にR16側から周る便は「藤ヶ谷先廻り」、高柳駅側から先に周る便は「風早先廻り」と称されていました。ただし、東武バスの循環系統でしばしば見られる13時を境に周回方向が変わるダイヤは組まれておらず、どの時間帯でも両方向の便が運行されていました。

同じく[柏22]を名乗る柏駅東口~小野塚台線とは一部でルートが重複しているものの、全く別の系統として扱われていました*2

[高柳01]は高柳駅と沼南役場北口を結ぶ系統で、自衛隊循環の区間便的な存在でした(ただし厳密には一部区間で通るルートが異なります)。

 

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こちらが風早先廻りの時刻表です。

当時自衛隊循環は改正の度に減便が続いており、この頃は[高柳01]と合わせても片方面15本/日もないダイヤでした。

風早先廻りでは、系統名の通りに循環する便はこの時既に全廃され、高柳駅や藤ヶ谷新田発着の区間便が残るのみだったようです。平日では藤ヶ谷新田行が4本、高柳止まりが2本、[高柳01]が5本運行されていました。

時間帯別に見てみると、夕方~夜間は1.5hに1本くらいの本数が確保されているものの、朝~昼のダイヤはスカスカであり、非常に偏ったダイヤになっていることがわかります。特に始発便が柏駅東口12:04発で午前中の便が皆無ということには驚かされます。朝の通勤通学需要は東武野田線や一部でルートが重複していたちばレインボーバスに持って行かれていたのでしょうか。

 

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一方こちらは藤ヶ谷先廻りの時刻表です。

風早先廻りよりも本数は少なく10本/日程度しかないですが、循環便が2本/日残されており、辛うじて循環系統の体裁を保っています。とはいえ[柏22]に限ってみれば午前中は朝の1本のみ、柏駅発の便(=循環便)が2本/日、区間便合わせても10本/日、という過疎ダイヤであることに変わりはありません。

高柳駅始発が4本、藤ヶ谷新田始発が1本、循環便が2本、[高柳01]が3本運行されていました。

 

1-2.その後の変遷

このようにローカル線ばりの過疎ダイヤで維持されていた当時の高柳・藤ヶ谷方面の系統ですが、それは減便に次ぐ減便によって作り出された最末期の姿でした。

この次の大規模なダイヤ改正(05年4月)では工業団地~藤ヶ谷新田~高柳駅間が廃止されて自衛隊循環は消滅、[柏22]は短縮されて柏駅東口~風早中学校~高柳駅を結ぶ路線となり、[高柳01]とともに生き残ります。

しかしそれも束の間、07年11月のダイヤ改正で両系統は共に廃止され、高柳・風早・藤ヶ谷地区から東武バスは完全に撤退することとなるのです。

その後同地には、柏市が運営する「かしわ乗合ジャンボタクシー」やデマンド型交通機関の「カシワニクル」が運行を開始、ジャンボタクシーは沼南庁舎バス乗継場にて既存の路線バスと連絡するシステムが整備されています。

 

それにしても、柏駅東口から1時間以上かけて再び柏駅東口に戻ってくるという遠大な循環系統が存在したとは、現在の路線網を見ていると隔世の感があります。一度は循環便に乗ってみたかったものです。

もっとも、渋滞が激しいルートを運行しているため定時性は低かったようなので、日常使いは御免ですが。

 

2.片山・手賀・布瀬方面系統([柏23][柏24][柏25][柏27])

2-1.2002年時点での運行状況

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2002年当時、柏駅東口から片山・手賀・布瀬方面に向かう路線は4系統が運行されていました。

最も奥地にある布瀬集落に向かう路線が[柏25]柏駅東口~布瀬で、4系統の中で最長路線です。

[柏24]柏駅東口~若白毛~手賀と[柏27]柏駅東口~手賀の丘公園は[柏25]の実質的な区間便で、それぞれ途中の手賀、手賀の丘公園止まりでした。

[柏23]柏駅東口~岩井~手賀は[柏24]と同じ手賀行ですが、他の3系統とは異なり岩井・染井新田を経由するルートをとっていました。

 

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上図は平日の布瀬方面時刻表です。全体では38本/日の便が運行されていました。駅→郊外方面の路線なので、夕ラッシュ時にやや偏重したダイヤとなっています。

行先経由別に内訳をみると、手賀の丘公園行が18本、若白毛経由手賀行が6本、岩井経由手賀行が5本、布瀬行が9本です。

手賀の丘公園行の多さが目立ちますが、これは朝ラッシュ時に7本もの本数が設定されていることが大きいでしょう。沿線に所在する沼南高校への通学需要に応えたものと思われます。

布瀬行と手賀行は同じくらいの本数で、夕ラッシュ時に多めながらも各時間帯に満遍なく運行されています。

白毛経由と岩井経由の比に着目すると、33:5と岩井経由の便が圧倒的に少なく設定されていることが分かります。2000年頃のダイヤでは若白毛:岩井の比は26:15であり、岩井経由もそれなりの本数が設定されていたのですが、01年の改正で大幅に削減されてしまいました。

 

 2-2.その後の変遷

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片山・手賀・布瀬方面の系統はその後、系統数の面でも便数の面でも衰退の一途を辿っています。

まず、07年の改正で一気に[柏23][柏24]の2系統が廃止されます。代替として[柏25]が手賀を経由するようになりその任を継ぎましたが、岩井経由のルートは[柏25]には受け継がれず廃止されました。

その後も改正毎に本数が削減される傾向にあります。現在では[柏25]が8本、[柏27]が13本、計21本が運行されていますが、これは02年当時の半分強ほどの本数です。

路線バス撤退後の岩井ルートについては、柏市が運営し東武バスイーストが実際の運行業務を受託する「かしわコミュニティバス」の路線が開業しましたが、5年半ほどで廃止されました。現在では先述の「カシワニクル」の乗降場所が設置されるに留まっています。

 

3.沼南車庫方面系統([柏31])

3-1.2002年時点での運行状況

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2002年当時、沼南車庫を発着する系統は[柏31]柏駅東口~沼南車庫1つのみでした。ルートは現在とほとんど変わっていません。

 

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上図は平日の柏駅東口方面の時刻表です。現在の繁栄ぶりからは想像もできないことですが、当時[柏31]の柏駅方面はわずか22本/日しか運行されていませんでした。

当時の[柏31]は出入庫系統の色が強く、出庫系統にあたる柏駅東口方面では、1日の半分弱の便が出庫車の多い7時半より前の時間帯に沼南車庫を出発していました。

8時以降は1~2時間に1本くらいのペースで運行されていたのですが、突然10分間隔になったり最終便が18:50発だったりと、いかにも出入庫系統らしい、お客ではなく出庫するバスの都合に合わせたダイヤの組み方がなされていて面白いです。

 

3-2.その後の変遷

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[柏31]にとって転機となったのは2016年のダイヤ改正です。沿線に大規模商業施設が開業したことを受けて、[柏31]はそのアクセスを担う路線として大幅に増回されることになりました。この結果、一気に柏駅東口の最多運行系統に躍り出ることになります。

更に、沼南工業団地の再開発に合わせて工場労働者を輸送する系統が新設されることとなり、新たに工業団地内を経由する[柏35]柏駅東口~工業団地中央~沼南車庫も開業しました。

現在では[柏31][柏35]合わせて平日柏駅方面は83本/日(深夜バス含む)もの便が運行されており、沼南営業所の基幹路線としての地位を確かなものとしています。

 

4.名戸ヶ谷方面系統([柏20][柏26][柏28][柏29][南柏02])

4-1.2002年時点での運行状況

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2002年当時、柏駅東口と名戸ヶ谷の間を結ぶ系統は3つ存在しました。

[柏20]柏駅東口~千代田町~名戸ヶ谷は千代田町を経由して名戸ヶ谷に向かう系統です。

もともと[柏20]は、柏駅東口から千代田町・常盤台・泉町を経由して柏駅に戻ってくる緑ヶ丘市内循環という系統でした。しかし2001年のダイヤ改正で緑ヶ丘循環は廃止され、[柏20]は緑ヶ丘まで緑ヶ丘循環の東側ルートを走行した後に名戸ヶ谷に向かう系統に衣替えしています。

[柏28]柏駅東口~常盤台~名戸ヶ谷は市内循環の西側ルートを走行した後に名戸ヶ谷に向かう系統で、[柏20]と対になるようなルートをとっていますが、こちらは市内循環廃止前から一定の本数が設定されていました。

一方、[柏29]柏駅東口~新田原~名戸ヶ谷は柏駅東口から県道51号線を経由して名戸ヶ谷に向かう系統で、3系統の中では最短経路で名戸ヶ谷にアクセスできる系統でした。

このほか、[南柏02]柏駅東口~南柏駅東口~酒井根が[柏28]と、[柏26]柏駅東口~逆井入口~南柏駅東口が[柏29]と、それぞれ一部ルートを共有していました。両系統とも名戸ヶ谷停留所には停車しませんが、関連する路線として時刻表に掲載しました。

 

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こちらは平日名戸ヶ谷方面の時刻表です。全日に渡って比較的高頻度で発着するダイヤが組まれていることがわかります。

3系統のうち最も本数が多いのは常盤台経由の[柏28]で、59本/日が運行されていました。おおむね毎時3本以上設定されており、旺盛な需要が窺えます。

千代田町経由の[柏20]と新田原経由の[柏29]はそれぞれ8本/日、11本/日と同程度の本数が設定されていました。

並行する系統が豊富な[柏29]はともかく、[柏20]は日常使いするにはやや不便なダイヤですが、裏を返せば当時それほど需要が先細っていたということでしょう。緑ヶ丘市内循環が廃止されたのは、このような需要の偏りによるところが大きかったと推測されます。

並行している[柏26]と[南柏02]は、それぞれ6本/日、4本/日が運行されていました。お世辞にも充実した本数とは言い難いですが、免許維持路線と言い切れるほどの本数ではないあたりから、一定の需要の存在が推測されます。

 

4-2.その後の変遷

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名戸ヶ谷方面は現在でもかなりの本数が確保されていますが、系統面での変化が大きいです。

3系統中最も本数の少なかった[柏20]は需要減により2014年の改正で廃止されてしまいました。

次いで本数の少なかった[柏29]は上り1本まで削減されましたが、2014年に新規開業した[柏33]柏駅東口~新柏駅がそのルートを踏襲し実質的な後継系統として機能しています。

[柏33]は20本/日が運行されているほか、既存ルート途中(新田原~亀甲台入口間)に新規停留所(あかね町東)が開設されるなど、需要の掘り出しに向けて積極的な姿勢が目立ちます。

[柏28]のドル箱ぶりは相変わらずなようで、今でも夕方の柏駅東口にはよく列ができています。ただし、本数は現在では51本/日と微減傾向にあります。

[柏26]と[南柏02]は、それぞれ3本/日、1本/日と本数を減らしています。とりわけ[南柏02]は免許維持系統と言って差し支えないレベルまで削減されており、[柏26]ともども今後の去就が注目されます。

 

 

とりあえず4系統分だけ作成してみました。やる気が出れば他の系統も作ってみます。

ご覧いただきありがとうございました。

 

参考文献

 

 

 

 

*1:過去のwebサイトのデータを保存しているサービス

*2:小野塚台線は[柏22]柏駅東口~大木戸線を前身としていますが、この系統は自衛隊循環のルート内にすっぽり収まります。このことから、かつて大木戸線は自衛隊循環の区間便として扱われていたために系統番号が自衛隊循環と重複していたのでは?との仮説が考えられますが、はっきりとしたことは分かりません。